ウロギネ疾患~主な症状と治療法
骨盤臓器脱
骨盤臓器脱とは
女性の骨盤の底には骨盤底筋群という筋肉がハンモック状に張られていて、骨盤内の臓器(膀胱、子宮、直腸)が落ちないように支えています。この骨盤底筋群が、出産によって傷ついたり、加齢や肥満によって緩むと、尿や便がもれてきます(排尿・排便障害)。さらに支えを失った骨盤内臓器が膣から身体の外へ出てきてしまうことがあります。これが子宮脱などの骨盤臓器脱です。

骨盤臓器脱の原因
- 妊娠、出産
- 肥満による体重の負荷
- 更年期におこるエストロゲンの減少
- 加齢による筋肉の脆弱化
- 喘息や慢性の咳
- 便秘
骨盤臓器脱の症状
①子宮脱・膣断端脱(*)(しきゅうだつ・ちつだんたんだつ)
陰部に何か物があるような感じ(異物感)、何かが下がってきている感じが強くなると、子宮が膣内から飛び出すようになり、下着などにこすれることによって粘膜に炎症や出血が起きたりします。
*膣断端とは…子宮の病気で子宮を摘出する際、子宮と膣を切断した部分を膣断端といいます。

②膀胱瘤(ぼうこうりゅう)
尿失禁や頻尿が起こるようになり、膀胱瘤が更に進むと、排尿困難になります。

③直腸瘤(ちょくちょうりゅう)
便秘、排便困難が見られます。

骨盤臓器脱の治療法
根本的な治療を望む場合は外科的手術を行うことになります。臓器脱の種類、臓器が下がっている程度によっていろいろな手術がありますし、手術方法も、膣の中から行う場合、お腹を切って行う場合などがあります。
TVM手術(メッシュ手術)

従来の手術は子宮を摘出したり、筋膜や靭帯を縫い縮めたり、膣壁に縫いつけたりする方法でした。しかし、その方法は手術後20~30%の人が再発するなど、体への負担が大きいものでした。これらに対して、2002~2003年に世界中に普及したのがこの手術です。生体に無害なメッシュシートを骨盤底にハンモック状に敷き、自然に線維化することにより周りの組織と一体化させ、弱った骨盤底の支持力を回復させます。
-
手術方法
TVM法は膣前方法と膣後方法の二つの方法があります。膀胱瘤には前方法、子宮脱、直腸瘤には後方法を行います。手術は腰椎麻酔か全身麻酔で、手術時間は約60~90分です。
ただし、次の方には原則的に行いません。- 妊娠・出産を予定している方…
- 経膣分娩に影響があるため。
- 膠原病や関節リウマチなどでステロイド剤を内服している方…
- 人工物を挿入するのでステロイド内服中だと、感染の可能性があるため
- 股関節に異常がある方…
- 手術時に股関節を開く体位を取る為、股関節が十分開かない場合、手術が出来ない場合があります。
-
手術後の過ごし方
メッシュが組織と癒着してしっかりと固定されるまでに必要な期間は約10週間です。それまでお風呂はバスタブに浸かるのは避けて、シャワー浴にします。ただし、陰部は良く洗い清潔にします。また、便通を整え、排便時に過度にいきむことのないようにし、激しい運動、性行為を控えます。以降はまったく普通の生活ができます。
-
合併症について
頻度は少ないのですが、以下のような合併症が起こる可能性があります。
- 出血
- 膣の切開の他にニードルという器具を挿入する為5mm程度の切開をしますが、ニードルを進める過程でまれに出血することがあります。
- 膀胱・直腸損傷
- 膣前方TVMでは膣壁と膀胱との剥離の際、あるいはニードルを刺す時に膀胱を損傷することがあります。直腸損傷は膣後方TVM手術の際に生じる可能性があります。
- 手術後の痛み
- 従来の手術と比べると少ないのですが、まれに骨盤底や股間に痛みを感じることがありますが、ほとんどが1か月以内に改善します。
- メッシュの露出
- 膣の創の治りが不良のため、メッシュの一部が膣壁から露出することがあります。これは創の感染や剥離した膣壁が厚く血行が良くない場合におこります。
- 尿失禁、排尿障害
- 通常は膀胱瘤を修復すると尿道の屈曲がなくなり、排尿がスムーズになります。その為腹圧性尿失禁が出現することがあります。この場合、TOTなどの腹圧性尿失禁の手術を改めて行う必要があります。TVM手術時にTOT手術を同時に行うこともあります。
TVM手術を受ける際には医師と相談し、納得されたうえで手術を受けることをお勧めしますので、私どもでご相談に応じます。
ウロギネホットライン ≫
TVM以外の手術
*子宮脱・膣断端脱に対する手術
- 子宮摘徐術(摘出後、膣断端脱の予防のため以下(ⅱ~ⅳ)の膣断端挙上術を行う)
- マッコール法(左右の仙骨子宮靭帯に膣後壁上部を縫い付ける方法)
- 仙棘靭帯固定術(仙骨と仙骨棘を結ぶ仙棘靭帯の膣断端を縫い付ける方法)
- 腸骨鼻骨筋膜固定術(坐骨棘近くの腸骨尾骨筋膜に膣の左右上部を縫い付ける方法)
- マンチェスター法(子宮を摘徐せずに子宮頸部を切除して、子宮を支える靭帯を縫いよせて子宮体挙上する
- 膣閉鎖術(膣の前壁と後壁の中央部を縫い合わせる方法)
- 膣仙骨固定術
*膀胱瘤・直腸瘤に対する手術
- 前膣壁形成術
- 傍膣壁形成術
- 後膣壁形成術
骨盤臓器脱の治療法
-
ホルモン療法
女性ホルモンを使用することで、組織の血行を改善して膣の乾燥を防いだり痛みを和らげたりすることができます
-
膣内挿入器具(ペッサリー)
ポリ塩化ビニール製の直径5~10cmのリング状の装具です。膣内に入れて下がってきた臓器を支えます。手術を希望しない方、手術のリスクが高い方、妊娠予定の方に向いています。

-
サポーター「フェミクッション」
下着状のサポーターと柔らかいクッションで、臓器が下にさがることを防ぐ新しい治療用具です。下着感覚で身につけることができます。
ウロギネお客様相談室≫
尿失禁
尿もれは尿失禁という病気です。尿失禁とは、排尿しようと思っていないのに、尿がもれてしまう病気です。咳やくしゃみをしたとたん尿がもれる、トイレに間に合わないという症状は決して珍しいことではありません。日本人女性で「ほぼ毎日」尿もれの症状のある人は50万人。「年に1~2回以上」の頻度ですと、およそ600万人と推定されています。年齢が上がるにつれ、尿もれを起こしやすくなりますが、30代(特に出産経験者)から増えはじめ、決してお年寄りだけの症状ではありません。症状が日常生活に支障をきたしているにもかかわらず、恥ずかしいから人に言えない、歳だからしかたがない、あるいは治らないとあきらめている人が多く、病気と捉えて医療機関できちんと治療を受けている人は3~6%にすぎません。尿失禁のタイプにより治療方法が違いますので、自分がどのタイプかを見極めましょう。
腹圧性尿失禁
咳やくしゃみをした拍子に、あるいはスポーツをした時にちょっと尿がもれる。さらには、階段の昇り降りや、重い物を持つといった日常の動作でお腹に力が入った時に尿もれをおこすことを「腹圧性尿失禁」といいます。
腹圧性尿失禁の原因
尿は、膀胱から尿道を経て体外に排出されますが、腹圧がかかった時に尿がもれないようにするのが、尿道にある括約筋です。男性の尿道はL字型で長さは約20㎝あるのに対して、女性の尿道は4㎝ほどしかありません。その分締める力が弱いわけです。また、骨盤底筋群(尿道、膣、肛門の周りに付き、骨盤の底を支える筋肉)にはお産が大きなダメージになり、歳をとるにつれて緩む傾向がある上に肥満や女性ホルモン低下の影響も受けます。この筋肉が緩むと膀胱や尿道はお尻の方へと下がり、尿道を締める力が正しく働かなくなります。そのため咳や運動をした瞬間、腹圧のかかった膀胱から尿が押し出され尿がもれてしまいます。
腹圧性尿失禁の予防と治療
腹圧性尿失禁の主な治療法には、骨盤底筋体操・服薬・手術があります。
- 骨盤底筋体操
- 薬による治療
- 腹圧性尿失禁の軽症から中等症の方には、薬による治療があります。効果がなかなか得られない場合や、副作用を伴う場合は、他の治療法も考える事をお勧めしますので、ご相談ください。
- β受容体刺激薬
- 交感神経β受容体を刺激して、外尿道括約筋(横紋筋)の収縮力を強めます。副作用として動悸、手の震え等がおきることがあります
- 女性ホルモン
- 女性ホルモンであるエストロゲン製剤は、主に閉経後にエストロゲンの分泌低下による骨盤底の弱まりを改善します。副作用として、不正出血・乳房の痛みなどがおこることがあります。
- 手術による治療
-

-
TVT手術
TVT手術は身体に影響のない特殊なテープで尿道を支持安定させる手術で、腹圧性尿失禁の人に適しています。局所麻酔下で、30分程度の短時間で行われ、体の負担が少なく、小さな傷(膣に1.5cm、下腹部左右に1㎝)、効果が長続きする手術です。合併症は少ないとはいえ、まれに腸管損傷を起こすこともあり、医師の説明を十分理解した上で受けることが大切です。
-
TOT手術
TOT手術は最近欧米ではTVT手術に代わって行われるようになった手術です。尿道の裏側からテープを通して尿道を支える点ではTVT手術と同じです。
-
コラーゲン注入法
尿道の壁にコラーゲンを注入して膀胱と尿道のつなぎ目あたりの尿道の壁をコラーゲンで隆起させ、尿道を塞ぐことによって尿もれを防ぐことを目的にしています。局所麻酔下のため外来で行えますが、1年以内に30~50%の人が再発します。
-
膣壁懸吊術(バーチ法、腹腔鏡下バーチ法)
膀胱頸部をつり上げて位置を修正する目的で、開腹、または腹腔鏡を用いた手術により膣壁を縫って吊り上げる手術です。この手術の効果は高いのですが、開腹の場合手術の傷跡が大きく(約15㎝)なります。
-
針式膀胱頸部挙上手術(ステイミー法、ラズ法)
膀胱頸部の脇の組織をつり上げることで、下がっている膀胱頸部を元の位置に持ち上げる手術です。ステイミー法は、人工血管にナイロン糸を通して膀胱頸部の両脇で針を用いてつり上げます。
ラズ法は人工血管を使わない方法です。どちらの方法もその吊り上げるナイロン糸に膀胱頸部を支える力すべてかかっているので、ナイロン糸がのびてしまったりして再発につながることがあります。尿もれが治る成功率は80~90%と高いのですが、術後5年には約40%のひとが再発しているという成績が発表されています。
-
筋膜スリング手術
膀胱頸部や尿道をつりあげるのに、自分の腹直筋の筋膜を細長い短冊状に採取し、膀胱頸部の下に当て、尿道をつり上げる手術です。体内に異物を入れる必要がないため、感染の心配が少なく、また、長期に効果が持続し再発が少ない方法です。ただこの方法は、つり上げ過ぎると尿が出なくなるという症状が起きるため、どのくらいの力でつり上げれば良いのかを調整するのが難しい手術法です。手術の傷跡も15㎝程度と大きくなります。
-
切迫性尿失禁
尿意を感じた途端に漏れたり、トイレに行く途中や下着をおろす間に我慢できずにもれてしまうタイプの尿失禁です。大脳が排尿の許可を出していないのに、膀胱が勝手に収縮して起きる尿もれを「切迫性尿失禁」といいます。腹圧性尿失禁に次いで女性によくある尿もれの症状で、加齢と共に増加します。
切迫性尿失禁の原因
排尿筋過活動(膀胱が勝手に収縮する)が原因とされる運動性のタイプと、膀胱が敏感すぎることが原因とされる感覚性のタイプに分けられます。運動性のタイプは脳や脊髄の神経経路に何らかの障害がある、排尿筋過反射によるものと、明らかな神経経路の障害のない不安定膀胱に分けられます。感覚性のタイプは膀胱の知覚が過敏になり、漏れてしまうものです。膀胱炎が代表的なものですが、尿がたまると痛む間質性膀胱炎などによる尿失禁もこのタイプです。 原因が多岐にわたり、原因の特定が困難なことも特徴です。
切迫性尿失禁の治療
薬物療法が中心となります。抗コリン薬の服用で多くの場合効果がありますが、効かない場合もあり、治療に難渋することもあります。
混合性尿失禁
腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方の要素を持っている尿失禁で、更年期以降の女性に多いタイプです。
混合性尿失禁の治療
腹圧性の要素が高い時は腹圧性尿失禁の手術で改善されることがあり、切迫性の要素が高い場合には抗コリン薬で改善されることもあります。
溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
排尿障害があって、残尿が常にあって絶えずもれるタイプの尿失禁です。子宮や卵巣の摘出術、大腸の切除術などの手術を経験された方に多くみられるタイプです。頻尿の事が多く切迫性尿失禁と似た 症状を示しますが、尿に勢いがなく、チョロチョロとしかでないという特徴があります。
溢流性尿失禁の原因
子宮がんや直腸がんの手術の際排尿にかかわる神経が損傷されたり尿道や外尿道口が狭くて残尿が増えて起こります。
溢流性尿失禁の治療
まず、残尿の原因となっている病気の治療をします。排尿に関する神経の損傷が原因である場合は、検査で損傷されている神経を推定して、薬剤による治療や尿道からカテーテルで残尿を取り除く自己導尿により治療します。


ウロギネ専門医 竹山政美先生のHP
ウェルネスライフのWEBサイト